300本以上のアプリ開発に携わるなかでたくさんの開発者を見てると、
どういう人がヒットを出して、どういう人が途中で脱落するのかが見えてきました。

ざっくり一言でいえば、人としてまっとうな人なのか、ビジネスマンとしての素養があるのかにつきるようです。 





ウソをつく人は絶対にヒットをだせません。
レスが遅い人もヒットをしません。
筋を通さない人もヒットをしなかったです。
今までの人生で一生懸命やったことが無い人もヒットしませんでした。



450303b492e63c2e3d5711c29de337d8




逆にヒットをさせる人はビジネスのカラクリにも興味を持つ人で、
人間の洞察にもすぐれていて誰よりも歴史や芸術を愛しスポーツや音楽にも造詣があるような人でした。



まるでユーザが開発者の人生まで見透かしているようなのです。
それなのに企業が開発者を雇うときはスキルだけを見て適者適応をしようとします。



ずいぶん昔から開発環境はスキル不足を解消するように進化してきました。 
「開発者が開発者たるまえにクリエイティブであるか」が重要な時代です。
でも文系経営者はスキルで数合わせをしているようです。 
そして、いまだに口達者な技術がわからない文系社員に企画をたくしているようです。


まるで旧石器時代のようです。
採用のところですでに糞アプリをつくる組織を作ってしまっているのかもしれません。
今回はそれよりも致命的である「ワークフローの罠」についてのべてみたいと思います。



【糞アプリを作る組織作りとは】

1.成功体験から学ぶ
アプリに限らないことですが、古今東西の成功ビジネスはラッキーの産物です。
それなのに、なぜラッキーだったのかを分析せず成功ビジネスを模倣しようとするようです。
成功ビジネスと同じような失敗事例を分析せずに良い情報ばかり見てしまうのです。
物事にはすべて真逆を証明する判例がよくあります。iPhoneアプリの世界はそれが特に多いんです。
でも、成功事例で塗り固められたものは、上長の決済を通るわけです。 
メクラ判を押したくなる成功方程式こそ疑わなければならないのです。


2.ランキングをベンチマークせよ
ランキングを見れば、今流行っているアプリはわかります。
でも、いま流行っているアプリは3ヶ月前にしこまれたものです。
これから、そのようなアプリを作ることは6ヶ月も遅れて出ることになります。
そもそも、ラッキーヒットがあるということは、「何でもラッキーヒットになる」可能性があります。
「流行っているからという理由」で不得意なアプリを作って失敗するほど惨めなことはありません。
未来のヒットを作るのが私たちの仕事です。
好きなアプリをどうやってヒットにするのか参考にするためにランキングを研究すべきです。
パクる材料を見つけにつかうべきではないのです。


3.売れているものだけを追いかけろ
「売れれば何でも良い。とにかく当てろ」という言葉を会社(上の人たち)は言います。
そりゃそうです。「儲けるため」に会社はあり「社員の自己実現」のためには会社はありません。
でもアプリのヒットは何十本ものアプリ開発の積み重ねでようやく成し遂げられます。
一発当たって次が出ない開発者は多いですが一発目から当たる開発者はほぼ皆無です。
だったら次につながるアプリ開発をすべきです。
闇雲に開発ジャンルを変えたりするものではありません。
ビジネス的に非効率なことをやるとiPhoneアプリの世界では勝てません。 
なぜなら個人開発者や破壊的企業がコスト度外視で得意な分野でタイトルをぶつけてくるからです。


4.「これ、いいね」って褒め合おう
わざわざ人間関係をギクシャクさせるような雰囲気を会社は作りたがりません。
だから会議では基本的に相手の意見を敬おうとなります。 
でも、クリエイティブな世界でこんなことはないはずです。
テレビ番組のプロデューサーや映画監督は、若手の意見に容赦ないと思います。
日本食の料亭にしても、イタリア料理のシェフにしても、ビルの工事現場の棟梁にしても、
職人の世界ではその集団のトップがお客さんを代弁して「お前は糞だ。できねえなら辞めろ」と罵声をあげています。

クリエイティブな集団のトップは顧客が駄目だと言えばもう終わりです。
ここで終わりたくないから若者を叱咤するわけです。
逆に若者の方が正しくて「親方の方がもう使い物にならなくなりましたね」
となればトップは自らの職人人生に終止符を打たなくてはなりません。

あなたの会社のトップはどうでしょうか。
過去に当たった事業があるだけの理由でポストに座りついていませんでしょうか。

若手にやらせっぱなしで手柄を自分のものにしようったってそうは問屋がおろしません。
手柄をたてた若者はまっさきに辞めて独立します。
このスパイラルにハマるといつになってもiPhoneアプリで成功できません。


5.分業で効率化、責任の所在をはっきりと
iPhoneアプリの成功ノウハウは何万行もあるコードのひとつひとつに落とさなくてはなりません。

誰かが指示してまた別の誰かがやるなんてやっていると成功ノウハウがどんどんスポイルされていきます。

一番効率的なのはプログラマーが企画から事業計画そしてデザインまで全てをやることになります。
そしてその全てのケツを拭くのはその事業をやっているトップでしかありません。
そのトップがセンスなければもう終わりです。
かつて、分業したり職権を幾層にもわけると責任の所在があきらかになるとされてきました。
でも、それは単一なビジネスモデルで同じ仕事を複数の人間にやらせているときだけ有効でした。 

iPhoneアプリの開発はマクドナルドやリクルートのようなものではありません。
作業そのものにモチベーションコントロールしたり人事評価など適応したって良いものはできません。
当たった人も当てなかった人もそれをやらせた人も、次の一本のチャンスがあれば有り難く真剣勝負ができます。
それだけでしかありません。
今開発しているアプリが人生最後と思えば分業とか責任の所在とか決めるような悠長なことにはならないでしょう。


6.できる奴に仕事をまわす
売上げが保証されない仕事を水商売といいます。アプリ開発とは言わば水商売です。
水商売に適した組織にする必要があります。
ずばり開発者がプロ契約するような組織です。

単一ビジネスモデルの商売であれば、出来る人が出来ない人を教えたり、自分が客先に出ずに営業部隊をまとめるといった効率化が有効ですが、iPhoneアプリのプロデュースは違います。

誰が当たるかわかりません。
できない人もできないなりに創作活動ができます。

だから、誰かを手伝うというやり方は非効率なのです。
組織がないと動けない人は要りません。

ではiPhoneアプリ開発での組織の役目はどんなものでしょうか。
これも水物の商売をやっている集団を見れば参考になります。

組織の利点は、ユーザ資産やブランド、ソースコードなどのビジネス資産を共有できることです。
また、ユーザからの信頼を持続するためのクオリティ維持のワークフローもできるでしょう。

一人でもまわせるようなプロの集団を作ると社員が逃げてしまうのではないかと思いがちです。
たしかに、職種や職権を専門化すると社員は逃げにくいかもしれません。
でも、明石家さんまが吉本興行をやめたり、木村拓哉がジャニーズをやめたりするでしょうか。

組織とプロの個人は、なんらかのバーターが成立しています。
iPhoneアプリ開発において、どんなバーターがなり得るのかを考えればいいです。
もし稼ぎ頭のクリエイターに逃げられたら、彼の出したアプリを上回るアプリを別のメンバーに作らせればいいです。
そもそも、企業というのはそういうものなのだからです。



7.あうんの呼吸でアドリブまわせる仲間たち
人々は、仕事がうまくまわっている人たちを見て「あうんの呼吸」がとれているように錯覚します。
何万行の開発コードの一行一行にアプリ成功ノウハウをつめる作業において、あうんの呼吸などあるわけがないです。

同じキャッチャーでも、うまくいく投手とうまくいかない投手がいるから、キャッチャーは一球一球の指示を飛ばします。
それと同様に「あうんの呼吸があうという錯覚」で仕事がやりやすいとかを決めてはなりません。

単一のビジネスモデルをまわしていたら、多少は同じ経験があるから「あうん」が成立していたかもしれません。
でも、何が当たるかわからないiPhoneの世界で、そんなことは成立しません。
日々蓄積されるノウハウをメーリングリストで共有したとしても、全員が全部を読んでいるわけがありません。
幸いにして目を通していたとしても伝わりきっているわけがありません。

物わかりの良さそうな人ほど理解していないものです。


あなたが「あうん」でコミュニケーションとれていると思う相手は、
そもそも「あうん」でなくてもビジネスがまわっていました。
相手もコミュケーションを円滑にするために、物わかりがいいフリをしているだけだったのです。



【1話から読める20話完結のステップメール】
「なんとかサービスはまわっているんだけど、劇的に利用者が伸びない」
「リアルのビジネスをしているんだけど、ITを駆使して集客を改善したい」