「紙はなくなりますか?自己紹介をしつつお答えください。」

カメラがまわった瞬間のことだった。
この記者、無茶なことを言うよな、国営放送ってのは糞真面目に小面倒なんだなと思った。

「私は九段下にある学校に通ってましたから、よく神保町に行き、本が何でも教えてくれたことを身にしみてわかっています。また千代田区にはたくさんの出版社があり、当時のベンチャーであったことも先生から教えてもらいました。情報が紙からネットに代わっただけで、私たちとそう変わらないと思います。」


俺はこのインタビューアーもしくは、この放送局の編集担当が、欲しそうな論点をはずして喋ってやろうと思った。しかも編集でカットされないような論点を出してやろうとも思った。


「ただ思うのは、私たちはほとんどタダでコンテンツを出しているので、ネットには、いい情報は出しづらいのかもしれません。紙では出してもネットでは出せないコンテンツがあるということです。例えば広告費で回収しようとおもっても、1000ページビューで、200円しか儲かりません。1000人が訪れても広告クリックする人は5人です。こういう状況だから、即効性のあるネタですぐに価値のなくなる情報でいかなくちゃならない、そう意味では、マスコミと同じですね。」


マスコミといえば、出版社も入るはずである。でもテレビのインタビューで、テレビ局を非難するのも格好がつかないので思わず言い換え、話題を他に変えた。


「このような状況ですから、コンテンツはどんどんタダになっていくという観点からは、紙はなくなるのかもしれません。ただ、マンガをスマホでタダで見せて、コミックで回収するというビジネスもありますから、紙がなくなるかが問題じゃなくて、儲ける手段がるかが大事なのだと思います。私も儲かるならば、映画だって、テレビだって活用しますよ。日本の映画が衰退したってディズニーはここで儲けてるのだから。」


「儲かる」という言葉で揚げ足をとられると思ったが、「紙がなくなるか」なんてどうでもいい問題だ。それにしても、テレビ局は他山の石だからと暢気なものであるから、つい言葉がでてしまった。ここでテレビという言葉がでて「挑発」とうけとめられては厄介だ。話題を変えなくちゃと思った。




【1話から読める20話完結のステップメール】
「なんとかサービスはまわっているんだけど、劇的に利用者が伸びない」
「リアルのビジネスをしているんだけど、ITを駆使して集客を改善したい」