インスタグラムといえば「写真の共有サービスでしょ」ってオジさんは理解したがります。
この考え方でいくと、FlickrやPicasaと何が違うんだとなります。


でも、実際のところ、インスタグラムは女性が綺麗な写真を日記みたいにあげる場であり、
芸能人がブログがわりに使っているサービスになっています。


今回はインスタグラムは何を再発明したのか。どこが芸術的なのかについて話したいと思います。

unnamed



1.軽い画素数にしてすぐにアップロード、閲覧できるようにした。
スマホになってカメラの撮影回数が激増。しかも画素数も数メガバイトに増えました。
ところがインスタグラムは1枚あたりの画素数を30Kバイトあまりにしました。
この時代を逆流するような選択は、「ネットを通じてみんなに今をすぐに共有できる」という、
ポラロイドカメラのインターネット版という使われ方をされました。


2.画像加工で綺麗にとる楽しみ方を提供した。
画像加工で綺麗にみせることができると、なんでもない風景が味わい深くなります。
となると、ユーザも綺麗な写真をとりたくなります。画素数には関係ない価値観をユーザに与えます。
綺麗な写真がとれたらアップロードしたくなる。そんな心理をうまくとりこみました。


3.友だち招待やフォローのしくみで、いきなり見せる場ができた。
インスタグラムがスタートしたばかりの頃、twitter経由で招待メールが飛び交いました。
最初の2ヶ月だけで100万ユーザを獲得、1年で1000万ユーザを獲得したと言われています。
今となってはよくあるスパムまがいなシステムですが、当時はここまでおもいっきりよくやるサービスはなかったので、すぐさま人のつながりができました。
見てくれる人がたくさんいないと写真をあげるモチベーションになりませんから、FacebookやTwitterのフレンドリストをそのままインスタでも活用する必要がありました。
独自のソーシャルグラフを作るというよりもこの乗っかるバランスも絶妙でした。


4.写真一枚に対してHTMLを生成。1枚ごとのコミュニケーション。
アップロードをするときに、FacebookとTwitterにも同時にあげることができます。
HTML(URL)が生成されているからこれができます。しかもここでコメントがつけば、コメントした人にメンションが飛びます。
あげた瞬間に誰かのコメントがつく→またコメント返ししたくなる。
こんなコミュニケーションが成立しそうだから、綺麗な光景をみたらインスタをやりたくなるのです。


5.シンプルなKPIと小人数の短期決戦。
インスタグラムは社員13人、売上ゼロで、Facebookに800億円で買収されました。
その時のユーザ数は3000万人。人が爆発的に増えれば売却先は見つかると腹をくくっていたのでしょう。
「で、どうやって儲けるの?」なんて言われて、広告やEC、課金ををやろうとしても、適任の人材をリクルーティングするのは大変ですし、サービスの根幹が変わることのユーザ離れも懸念されます。
そういう中で「ユーザを獲得、リテンションさせることがもっとも価値のあるもの」と位置づけ、KPIをシンプルにしたからこそ、この短期決戦がうまくいったのでしょう。



これらを簡潔にまとめると、

1.逆転の発想(閲覧速度>画素数)
2.画素数に関係ない価値観の提供
3.攻めの集客(TW/FBをジャック)
4.写真1枚に人が集まるしくみ
5.ユーザグロースのみに集中


ということになります。
ツィッターでもFacebookでも日記みたいに写真をあげる人はいます。

ただツィッターはネガティブなつぶやきもあるし、写真が過去に流れていきます。
Facebookはリア充な文章、社交辞令など、村社会的な言葉の世界です。


それに対し、インスタが綺麗な写真のキラキラした世界。
とりあえずあげてみたら、感性の合う人がポジティブなコメントを残してくれる。


というように、インスタグラムは「写真の共有サービス」と一括りにできない世界観があります。
この世界観こそ、彼らが発明した最たるものでした。


パーティでポラロイド写真を撮り合うようなポジティブな体験価値をインターネットで実現するには、
綺麗な写真加工」が重要だということをきちんと理解してたはずです。


インスタ以降、さまざまな写真加工アプリがでてきましたが、
それはインスタであげるための手段でしかなく、
発表する場がすでにできているので、なかなか他のサービスに移動しません。

そういう観点でみると、早期のソーシャルグラフの構築も重要でした。
上記の5つのポイントがひとつでも欠けていると、いまのインスタの地位はなかったのかもしれません。


そして最後の戦略は見事でした。
もはやFaceBookの庇護下におかれていることですから、そうは簡単に崩せないわけです。
iPhoneが出始めたスタートのタイミング(2010年10月6日)も絶妙でしたし早期の売却のタイミング(2012年4月)も絶妙でした。


ケヴィン・シストロムとマイク・クリーガーという創業者たちは、相当なアートな奴だと思う次第です。




【1話から読める20話完結のステップメール】
「なんとかサービスはまわっているんだけど、劇的に利用者が伸びない」
「リアルのビジネスをしているんだけど、ITを駆使して集客を改善したい」