2011年4月、個人ディベロッパーたちが、ランキングからどんどん消えていった。 AppStoreが開設されて3年の間に、多くの参入企業が淘汰するなか、 2010年は個人ディベロッパーの母数が後押しして、ランキング上に多彩な顔ぶれが見えて いた。

ところが、某著名アプリレビューサイトの編集者は、「3.11以降、個人ディベロッパーは死んでしまった」と言う。震災による民意の変遷が、直接関与するのかわからないが、少 なくともひとつの流れが終わったのだ。


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3年前、iPhoneに可能性を見いだした先取り開発者が目立った時代、ゲームメーカーが ビッグタイトルを移植し始めて、かつてのガラケー事業者が参入した時代、いつでもモンスターのように映っていた個人ディベロッパーが脅威ではなくなったのだ。

個人ディベロッパーの活躍場所は、主に無料アプリで、一発勝負のエンタメ、チョイゲー だった。あとはツール類を有料で売るという数少ない一角も担っていた。

ところが無料アプリの分野でも、個人にとっては莫大な広告費を出す法人企業が増えてきた。さらに、法人企業の方がいいアプリを作るようになったことで、なおさら個人ディベ ロッパーにとって市場が厳しくなってきた。

 

今回は勢いのよい法人企業の動きを考察しながら、個人ディベロッパーがどう戦えばよい かを提言したいと思う。

法人も収益性の低いうえに、モンスターユーザーの心ないレビューにさらされている。市場概況としては依然厳しいのであるが、次々にランキングを駆け上るアプリを市場に投入 している、ハンゲーム(NHN)、アドウェイズ、サイバーエージェント(およびグループ 各社)、GREE、モバゲー(DeNA)を例にあげ、各社の動きについて感じたところをま とめてみた。

いずれの企業も、2010年はまったくと言っていいほどiPhone界では目立たなかった。おそらく試行錯誤の1年があったからこそ、今日があるのだと先に指摘しておく。

 
【1話から読める20話完結のステップメール】
「なんとかサービスはまわっているんだけど、劇的に利用者が伸びない」
「リアルのビジネスをしているんだけど、ITを駆使して集客を改善したい」


■先陣をきったハンゲーム
2011年4月以降、まず目立ったのがハンゲームだった。100億円で100本のアプリを作るというようなニュースリリースがあったところを見ると、おそらくたくさんの食えていない 制作会社に潤いを与えたのだと思われる。

当初、レビューに国籍差別のバッシングまであったが、今ランキング上位にいるアプリはレビューもよくなっている。何本も何本も出しては改善していく企業姿勢には頭がさが る。

外注を食わせて、なおかつブランドをあげ、ユーザーも増えて来たところで、圧倒的な強みのある自社コンテンツのMMORPGがいつ到来するのかワクワクするところだ。
 

■ビジネスの基本を見せつけたアドウェイズ
次に注目されたのはアドウェイズ。「怪物クロニクル」の大ヒットは、ガラケーを専業と するソーシャルアプリプロバイダーを刺激した。 このアプリはコンシューマー課金のみならず広告ビジネスもやっており、同社の強みが活 かされている。

誰もやらない時に先にやってしまうというビジネスの基本の「キ」を見せつけられた。彼らが出すゲームは、いわゆるプラットフォーム(GREE、モバゲー)に乗っておらず、自 社アプリのみだけでの集客とマネタイズが成立している。

今までプラットフォームありきとされていた業界の常識がぶっ壊されたのである。
 

■無料化戦略を進めるGREE
GREEは、有料アプリで売り上げをあげていたアプリを無料化する戦略で、多くのヒットコンテンツをGREEプラットフォームに乗せて来ている。

もう旬を過ぎたアプリを抱えるディベロッパーにとっては2度目の果実を得ることとなり、これからソーシャルゲームで参入する企業のために、ユーザーアカウントを増やしている。
 

■底力を見せるモバゲー
モバゲーはようやく本格化ソーシャルゲーム
「忍者ロワイヤル」でその底力を見せつけつつある。 前述の「怪物クロニクル」がWEB主体のゲームであるのに対して、「忍者ロワイヤル」は ネイティブゲームもきっちりと作り込んでいる。

GREEとモバゲーは、レビューにて、課金導線の多さにバッシングを受けている際中であるが、ハンゲームのようにきちんと評価をあげていくかどうかが注目されるところだ。
 

■着実にランクを上げるサイバーエージェント
最後にあげる注目の企業がサイバーエージェントグループだ。アプリのジャンルやビジネスモデルが多岐にわたり、何をしたいのかわからないが、とにかく着実にランキングを上げているところが天晴だ。

彼らはいち早く、「FreeAppNow」で法人企業向けリワード広告を立ち上げ、事業としても成果をあげたようだ。法人企業にとってアプリ開発を開発するだけではなく、広告を出してランキングを上げてからが勝負だ。

このような企業に対するBtoB向けサービスが、今後は続々と登場するだろう。
 

●戦国ゲームが相次いで発表。
いずれも大ヒット。 モバイル広告の最大手のディーツーコミュニケーションズは、「障子ぽすぽす」で無料総合1位をとったあと、 満を期して投入した「関ヶ原演義」が、トップセールスでも一桁台をマーク。 また、ソーシャルゲーム事業で上場を果たしたKlab株式会社は、モバゲーやグリーで展開していた「戦国バスター」シリーズを、iPhoneでは独自会員化で 高セールスをマークした。 彼等の成功により、モバゲーやグリーのプラットフォームに乗らないやり方でも十分にマネタイズできることが実証された。
 

●フジテレビのゲームアプリ1000本ノックが累計500万ダウンロードを達成。
ファーストフード、ファーストファッションに次ぐ、ファーストアプリとして、 誰もがちょっとした隙間時間に楽しめるカジュアルゲームを展開しているフジテレビ。 年末にはカンフーランナーやブロック工場が大ヒットし、ようやくプレゼンスをみせつけた。
 

●なめこシリーズが900万ダウンロードを達成。
ゲーム開発の老舗ビーワークスは、もともと任天堂DS向けに開発された「おさわり探偵小沢里奈」のiOS版のリリースにあわせ、 同タイトルのプロモーションを目的に「なめこ栽培キッド」をリリース、大ヒットをおさめた。 なめこのキャラクターグッズを販売開始。つみねこに次ぐ、iPhoneが生んだ日本のキャラ クターとなった。

以上、去年の主立ったプレイヤーの動きをまとめてみた。

どの会社にも言えることは、法人企業同士による結託につきる。ある時は開発を流し、ある時は広告を買い、ある時はプラットフォームを提供するなど、モンスターユーザーに対抗すべくサービスや収益性をよりよくしている。 かつてのガラケー時代、広告主、広告代理店、開発会社、コンテンツホルダーなど、多く のプレイヤーが適切であろう「富の分配」をしていた。これと同じことが、スマホビジネ スにも起こりつつあると予見される。
 
 

■個人ディベロッパーよ!結託せよ
さて、このような市場概況のなか、個人ディベロッパーは何をすればいいのだろう。私は、レインボーアップススクールの受講生たちに、「みなさんで結託してください。企業であろうと個人であろうと関係ありません。」と言って来た。

今こそ、できるところで結託しなくてはならない時だ。企業にしたって、個人ディベロッパーと結託したくてたまらないはずだ。 ひとつ確かなことが言えるのは、「今のレベルではユーザーが満足していない」というこ とだ。モンスターユーザーが悪態をつくことがむなしくなるようなサービスを、みんなで結託して作るしかない。そんな局面に我々は来ている。



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