今まで先駆的にこの領域で受託をやっていた企業が、発注後の仕様変更や、納品しかかりの時の手戻りで赤字だという話をよく聞くようになった。


受託は奴隷だといわれる。しかし奴隷は衣食住が保証されていた。 マフィアの世界では「活かさず殺さず」、政府も「国民や国策企業は、活かさず殺さず」 が合い言葉らしい。しかし、どうやらこのスマホ受託業界では、言葉は悪いが、「殺しまくりの焼き畑」というが現状のようだ。


2011年末、iPhoneアプリの開発実績の豊富な開発会社の買収があいついだ。 「サムライパーチェス」というコンテンツ決済ソリューションで知名度のある コニットはミクシィに完全買収され、 育成ゲームの「MEGU」を大ヒットさせたファインマンはグリーに完全買収された。

自社アプリをリリースするよりも、売上げが保証されるはずの受託開発ではあるが、 今回は「受託開発における罠」について述べてみたい。



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■安い仕事で首が絞まる
受託業者に少ない見積もりで仕事をさせるのは簡単だ。エンジニアあがりに経営や営業など一番不得意だからだ。
 

「あいみつもり」とはいい道具で、だれかが安くやりますといえば相場が下がる。こんなことを続ければ、絶対に安くなる。


200万円以下の案件は絶対に受けない方がいいらしい。


そもそも、成功しているアプリビジネスの多くは、開発/メンテナンス予算に4000万円ぐらいかけているという情報がある中で、「中途半端なことはやらない方がいい」と、発注者に一言添える勇気が受託業界の者には必要だ。安い仕事で首が絞まるのは、受託業者だけでなく発注者自身もそうなのだから。


【1話から読める20話完結のステップメール】
「なんとかサービスはまわっているんだけど、劇的に利用者が伸びない」
「リアルのビジネスをしているんだけど、ITを駆使して集客を改善したい」

 

■“アプリ開発したことあります”で年収100万円アップのお粗末
取引先にエンジニアが行ってしまった。 派遣先にとられてしまった。 2人連続で同じ企業にいってしまった。こういう話は昔からよくあるが、現在はちょっとですぎた感があるらしい。まだ事業が確立されない中で、無理して入れたところでバーンレートを早くするだけである。こういう ところで流れるエンジニアは、ブランド志向で目移りがはげしいので、おそらく、またどこかを転々とするのだろう。
 

やはりここでも賃金の低い受託業界から人が抜かれている。


今までは大手IT企業同士の奪い合いだったのが、現在は吸い上げ型になっているのが特徴 だ。それは、大手のスマホ参入が遅れたから他ならない。そのしわ寄せが、スマホ先駆者 である受託業者に来ているのだ。
 

都内でスマホ受託をやるのは、大手のためにエンジニアを育てていると思った方がよさそうなくらいだ。


■旧モバイル企業のスマホ先駆者がやめている
これは理解にたやすい。ガラケーは収益率が高くスマホは小さい。しかも高確率で失敗する。
だから経営陣は、その事業を任せている者に厳しくなる。厳しく当てられた先に、長年頑張ってきた企業を去るということが待っている。
 

経営陣はその昔、ケータイとにらめっこしてドコモの企画書を書いて、といろいろ努力をしたことだろう。しかし、スマホの努力はそれを遥かに凌駕している。スマホのコンテ ンツは、紙芝居やリンク集ではない。すべてがゲームのようなユーザビリティだ。
 

大変なので、すべてを部下にやらせる。部下は一生懸命やる。毎日プライベート時間をスマホについやし、ようやくヒューマンインターフェイスがなんたるかを会得する。
ガラケーばかり見ている社員にそのナレッジの共有は無理だから、外でセッサタクマしている同じような仲間とシェアをする。


つまり、ガラケー経営陣は、スマホに先手をうつほどバカを見ることになる。
今の感覚値は2000年のガラケー時代だからだ。
 

そもそも彼らも、そこまで先駆者ではなかったのだから、もっともっと待った方がいい。 少なくとも2年後に2匹目のドジョウで、その丈にあったビジネスをすれば十分、六本木で遊べるようになるだろう。



■鼻息あらいリタイア組
ケータイサイトで上場(当時はガラケーという言葉は無かったので)、そして表舞台から 去った人たちが、どうもスマホで鼻息が荒いらしい。学生を集めては自ら仕様設計書を書いたりと、要は昔やっていたことを好きだから繰り返している。

金や経験、コネがあるわけだから、どこの企業のスマホプロデューサーよりもプロデュース力がある。というか、やってのける。iモードが無い時代にiモードサイトの画面仕様を書いていたわけだから。
 

しかも時間がある。やはりスマホばっかりいじっている。センスは六本木で磨いている。おそらく。


話の締めくくり的になったので、まとめると、結局スマホで旋風を起こすのは、彼ら、リタイア組なのかもしれない。
 

レベニューシェアで“ガラケーサイトからの移植を手伝ってよ”なんていう企業が増えて来ているらしいが、そんな奴らと手を組むより、ケータイサイトでリタイアしたおっさんに、酒をおごってもらいながら、軽いノリだけ大切にしてやった方がいいんじゃないか。
 


彼らはもはや金では動かない。スマホというロマンに取り憑かれている。
ジョブズが死んだことで、なおさらそれが加速しているのだろう。



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