「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」とは、よく言ったもんだ。


スティーブ・ジョブズが死んだとき、今まで買いあさったジョブズ本を全て捨てた。
なぜなら死んだ者から学ぶものはないと思ったからだ。
こともあろうに、この死にあわせて伝記本が発表されてしまった。
タイミングの良さに喪黒福造のような気持ち悪さを感じつつも、最後の最後のつもりで読んでしまったというわけである。

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この伝記本は、数々の人々の証言とジョブズ本人のコメントによるものだから、賢者にとってはどうでもいい「経験」のあつまりになる。


昔に出版されたジョブズ本の方が「歴史」のアプローチをしており、
ビジネスの気づきに なりそうなことが後付けでうまく編集されている。
だから、これらの本に出てくること を、さも知り得たように書くのは愚問なので、はじめて知り得た情報をまとめてみたら、 このようなタイトルが浮かび上がったわけである。
 

では、君がジョブズになれない秘密のトビラをあけてみよう。


1.LSDは自分の人生に大きな影響を与えた
カート・コバーンやエリック・クラプトンが喋るならまだしも、世界最高の企業を作り上げた人物にはふさわしくないことが書いてある。ネクストのコンピュータを軍関連に売っ たとき、この薬物はいつやったかとか、いつ辞めたとかつぶさに答えたそうだ。
 

ジミ・ヘンドリックスの「Are You Experienced?」を彷彿とするような、「やったことない奴には分からんだろうな」というコメントもある。
 

MacBookでのフワフワ浮くDockのアイコン一覧や、ゴミ箱に吸い取られるような演出、 iPhoneでスワイプするとバイーンとはねかえるところなど、マイクロソフトやGoogleなん かにできないというのは、ヤク体験がないからだと言わんばかりだ。
 

「昔、俺の周りにミュージシャンを目指す奴がいた。俺はクスリなんかに頼らないぜと 言っていたら、案の定、不発に終わった。」

ジョン・レノンやポール・マッカートニーに無礼な奴はいつまでたっても、「やっていない奴には分からない」のである。


ジョブズが昔、住んでいた家に「瞑想ルーム」があったそうだ。

発砲スチロールがたくさん敷き詰められて、ぶっ飛んだときにフワフワしているようにしてあった。
そこに同居人がネコをつれてきて、そいつが小便をまきちらしたので、その 後、瞑想ルームはほったらかしになったようだ、
 

こんなことを真面目に書いてある伝記本はなかなかないだろう。



2.他人の飯まで俺が決める
ジョブズは商談のディナーをよくセッティングしていた。
彼はベジタリアンだから、当然 そのような食事になる。相手が何十万円のワインをもってきても、彼が用意するディナー は数千円でキメる。他人をここまでコントロールしたいというのは、彼のプロダクト全般に言える。
 

プロダクトに美学を押し付ける事業家はたくさんいるだろうが、他人の飯まで決められない奴は、どうせ中途半端に終わるのだろう。

彼が目指したものは、ハードウェアとソフトウェアとコンテンツ管理をまとめること。 他社には使わせない。オープンなんて言葉はもってのほかだ。
 

こんなことをすれば自分のビジョンの一部をあきらめるのと同じなのである。


3.商談に自分の妻と、相手の妻も利用する。
この伝記本に、妻のモーリーンはよく登場する。
また、相手夫妻をまじえた商談ディナー もしばしば登場する。
ビックリするのは、彼女がAppleの事業にくわしいことだ。

ジョブズは妻に自分のプレゼン資料に意見を求めたりする。まるで農家の夫婦のように、 妻をこき使う。 プライベートと仕事をきっちりわけるスノッブな人間を馬鹿にしているようにも思える。
 

ちなみにプライベートと言えば、家族を犠牲にしても自分の美学を押し付ける。
ジョブズ は、本当にいいものしか買えないので、家具を決めるのに半年かかる。
ドイツ製の洗濯機 を買うプロセスは家族会議を何回も繰り返したと言う。
 

他社の製品にもいっちゃもんをつけて、余計な助言をする。すぐに必要なものでも、なくてもいいと言い切る。家具がなくて本当に困っている家族の犠牲を払ってでも。



4.オフィスは自分で設計する
ジョブズは、工場のみならず、ネクストの社屋、ピクサーの社屋、そしてAppleの新社屋を設計している。晩年はクルーザーを設計していた。


息子にApple新社屋の模型を見せ、

「遠くから見ると、ここがチ○コに見えるぞ」と茶化されたとき、
そんなことはないと否 定した。

しかし、翌日にどうしてもチ○コのイメージがこびりついて離れないと言って、

設計を変えてしまう。ジョブズは案外正直なところもある。

彼は発明の特許をたくさん申請しているが、Appleのプロダクトだけではなく、建築に関してもたくさん申請している。


ジョブズにとってはオフィスを設計することは、家を設計することと同じであり、そのときに発想したアイデアは、プロダクトのための特許と同等の価値をもつのである。
 

【1話から読める20話完結のステップメール】
「なんとかサービスはまわっているんだけど、劇的に利用者が伸びない」
「リアルのビジネスをしているんだけど、ITを駆使して集客を改善したい」

 


5.金を儲けたいのではなく、すごいものを作りたい
俺はカリフォルニアの中産階級に生まれてお金に不自由したとがない。
インドに行って 貧困生活をすすんでやったほどだ。
今ありえないほどのお金を手に入れたが、お金に対して自由でいたいと思っている。

Appleで手にしたお金でおかしくなった連中をたくさん見て来た。そうならないために、お金のために働くということをしたくない。これがジョブズの理屈だ。
 

また、「顧客が望むものを提供しろ」という奴を軽蔑する。
彼が嫌いなタイプはビジネスマンであり、営業畑の人間だ。エンジニアはアーティストだと決めつける。
 

顧客が今後何を望むようになるのか、顧客本人よりも早くつかむのが自分たちの仕事だと言う。だから、ジョブズは市場調査に頼らない。歴史のページにないことをやることしか眼中にないのである。


スタートアップを興してどこかに売って次に行く、こんなことをしたいと考えている連中が、自らを「アントレプレナー」と呼んでいるのは聞くだけで吐き気がするのだ。

 

6.二流の奴らを排除しないとダメになる
腐ったミカンを放置しておくと、他のミカンが腐る。
こんなことを教師が言ったらすぐに 免職になるだろう。

ジョブズに言わせてみれば、二流の奴をのさばらせると、一流の人たちが快適ではなくなる。ゆえに良いプロダクトができないというわけだ。


そんな一流の人たちをかき集めても、「お前はクズだ」と言いつける。一生懸命作ったプロトタイプに対しても、「ガラクタだ」と決めつける。彼にとって、全てのものが「最高 かガラクタ」でしかない。
 

そのような発想で、人に気を遣うことなく気軽に、「クソだ」と言える。そんな超正直になれることを、「僕らの部屋に入れる入場料」だと言う。


「スティーブ、お前こそ頭のてっぺんからつま先までクソ野郎だ」と言われて、カンカンに怒鳴り合ったことを、人生でもそんなにはない素晴らしい体験だったとふりかえる。
 

彼にとっては伝説のロックバンド、クリームのように、インプロビゼーションでかけあうジャムセッションのつもりなのだろう。



7.自然療法を信じて、癌を9カ月も放置
早期に癌が見つかったにもかかわらず、家族や医者たちは手術するように説得するのに大変だったと言う。「俺が見つけた自然療法が正しい」と9カ月ずっとつっぱねてきた。
 

ジョブズは自分の都合のいいことを考えると、医学も信じない。自分の美学にあわなければ、死んでもかまわないらしい。
 

絶対できるはずだという信念は、世の中にいいプロダクトを残したが、自分の死は早めてしまった。

彼にとっては、ジミ・ヘンドリックスやジャニス・ジョプリンのように、絶頂で死ぬということも彼の芸術の範疇ともとれる。

最後の芸術と言えば、ジョブズが癌治療の未来を切り開く最高のサンプルになったと言うことだ。



以上、「7つのジョブズになれない理由」をあげてみた。

 

7つのうち1つでも、「自分と同じだ」と思えることがあったのなら、まずはiPhoneアプリでも作ったらどうだろう。アプリぐらいだったら少ない人間に怒鳴り散らすぐらいでい いだろうし、家族もアプリのためぐらいだったら少々目をつむってくれるだろう。 死を覚悟することもない。
 

会社を興すなんて二の次なのだ。ジョブズに言わせてみれば。


それよりアプリを出してしまえば、レビュー欄でスティーブみたいなユーザから、「この開発者は頭のてっぺんからつま先までクソ野郎だ」と書かれて、久しぶりにしびれることができるだろう。
 

君の人生のリスタートはそこからだ。


ボブ・ディランがエレキに持ち替えて、観客からブーイングをウケても、ガンガン爆音たててもくもくと歌い続けたように。


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